
立案者と設計者が苦心している点はカナダのウォーターフロント専門家がもとにしていた原則と同様である。つまり生活、業務、遊びの機能を併せ持っていること、公園や緑地なども含めてウォーターフロントに通じるパブリックアクセス手段があること、景観や眺めを確保すること、環境への配慮、空気と大地と水が出会う特別な場所としてのウォーターフロントヘの全体的な配慮がなされている。
これらの都市はまだ生まれたばかりで、工事中であったり、ビルの中がから生きであったり、人工的な埋立地である等の理由で、この場所の特徴をまだすべて備えていない。しかしどの都市も開発のスタートをきり、独自のアイデンティティーを育てつつある。
これらは地理、設計、機能特性の強い影響を受けて形成されている。設計者や意志決定者が歴史的要索や文化的要素をうまく生かして導入している。
神戸においても、ウォーターフロントを訪れた者には、背後からこの町を取り巻く山々が記憶に残っている。北九州では国立公園のごつごつした岩山と、ある位置からは対岸に下関と本州をおぼろげに望みながら関門海峡の渦潮が見える。視点を変えると大海原が広がり、これがアジアに開いた日本の入り口としての北九州市のウォーターフロントであるというイメージが強烈な印象を与える。一方、横浜では東京湾に沿った埋立地や新しいランドマークといえる巨大建造物を見ることによって、東京湾という大海から離れた港湾としての長い歴史が思い起こされ、同時に21世紀の事業と行政の中心地としての役割を担う都市であることも想起された。
それぞれの主要ウォーターフロント開発地にあるランドマーク建造物は立派で独自性がある。日本から帰国して一ヶ月後、新刊本の表紙に載った印象的な「みなとみらい21」の写真を見て、即座に横浜ウォーターフロントを見学した時の記憶が沸き上がってきた。福岡タワー、その近くの福岡ドームとシーホークホテル、東京のビッグサイトコンファレンスセンター、テレコムセンター、晴海旅客ターミナル、竹芝ターミナル、神戸のメリケンコンファレンスセンターと公園などの写真を見たとしても同じようにあの時の記憶がよみがえるに違いない。
文化的施設および歴史的施設はできるだけ保存し、修復し、再開発するなどの配慮を払わねばならない。明治時代を想起させる歴史的地域の建造物、横浜の日本丸(帆船)歴史公園、横浜のランドマークタワーのそばに保存される三菱造船所などは好例である。
最後に、東京湾の中に、コンテナターミナルに隣接して地域スポーツ場がある。これを見ると、日本のウォーターフロント専門家があらゆる用途を統合させるという考えを本当
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